741/1085
追走
それもあくまで、私が視認出来る距離だ。
もちろん、そのスピード自体も手加減されたものだとはわかっていた。
「くっ……!」
だからと言って、当然潔く負けを認めるなんてことは出来ない。
地面を蹴り、同じように壁を蹴っていきながら、追いかける。
加減されているとは言え、私が必死に追いかけて、並走出来ているかどうかのギリギリの速度。
既に距離が開いている以上、間違っても追いつける訳がない。
なら――どうすれば、いい?
「……はぁ!……はぁ!」
加えて、地を走るでもなく、屋上を駆けるのでもなく、壁を蹴って先を進むなんてはじめてのことだ。
簡単に進むショウ兄さんを追いかけていては、徐々に、しかし、確実に距離が開いていく――
「どうした、それでは追いつけないぞ」
そんなことはわかっている。
でも、追い付く方法が――――
いや、私が追って追いつけないのなら、ショウ兄さんを足止めするしかない。
となると、魔法や気功での遠距離からの攻撃だろうか。




