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及第
通常ではあまり見ない軌道、速度で翻弄しようとする。
上。
「……」
左。
「と」
右。
「だな」
それでも、簡単に”スライド”で避けられてしまう。
しかし、ここで緩急。
曲調を変えて、アップテンポへ。
三連突き――!
「……む」
と、そこではじめて、ショウ兄さんはナイフで剣を防いだ。
「な……!?」
剣が、流れる――
私はそのまま、つんのめりそうになるのを堪え、体勢を立て直した。
前のめりになっていた訳じゃない。
単に受け流されたことで、体勢を崩された。
「……」
ショウ兄さんは自身のナイフを見る、
そして、私を見た。
「ひとまずは及第点か」
「……え?」
合格点を貰った……?
今の一連のやり取り、私が一方的に攻めあぐねていた。
強いていうなら、はじめてナイフを使わせたこと。
それだけで、及第点とまで称されるのか――
「なら、そろそろ、本題だ」
「!」
「おれを捕まえてみろ」
と、ショウ兄さんは軽く、ぽーんと飛び跳ねた。
それだけで、建物の窓の辺りまで飛びあがっていた。




