734/1085
雲のような相手
「逃げ、ない……のですか……?」
「…………」
じっ……とショウ兄さんは私を見つめる。
そして、一息、ため息をついた。
「まぁ、それもそうだな」
とても本心とは思えない、気の抜けた言葉を吐いた。
かと思うと、ショウ兄さんは足で箱を蹴りあげ、持つと、
無防備にも背中を向けた。
「なっ……!?」
「さて、と」
そのまま、走るでもなく、ショウ兄さんは歩き出した。
「くっ……馬鹿にして!」
私は剣を抜き、一息に距離を詰め、斬りかかった。
「――――本当に馬鹿なのか?」
「!?」
何故かショウ兄さんの声は背後からした。
かと思うと、剣は空を斬り、私は背中に蹴りを喰らい、ふっとんだ。
「あからさまな、罠、挑発だろう?
様子見にけん制するでも、回り込むでもやりようがあったのに、馬鹿正直に斬りかかってくるとは……」
やれやれ、とショウ兄さんは頭を振る。
私は起き上がり、再度剣を向ける。
なのに、ショウ兄さんは私と対峙したまま動こうとしなかった。
「…………一体、どういうつもりですか?」




