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余裕綽々
「くっ……!」
だけど、このまま倒れる訳にはいかない。
ショウ兄さんが倒れた私に追撃をしなかったとしても、
倒れてから起き上がるまでの時間、ショウ兄さんはどこにでも逃げることが出来る。
姿が見えなくなってしまえば、おしまいだ。
「『エアロ』!」
倒れ込む時、人は反射で、腕で頭などを自然と守ろうとする。
その自然の反射で地面に近かった手から、風を起こし、姿勢制御を行った。
「っと」
片手で前転宙返りをしたような形で、私は着地した。
これで、多少でもロスを少なく出来――
「ふむ」
予想に反し、ショウ兄さんは腕を組んで、私を見ていた。
ましてや、目的のお金の入った箱は地面に置き、
辛うじて、足を添えることでそれが彼の所有物である体を保っていた。
「な……!」
「目的が”こいつ”なのはそうなんだろうがね……
ひとまずは、そのものを狙わずに、おれの身体全体のどこでも当てるつもりがいいぞ。
馬鹿正直に箱を狙っては動きがバレバレだ」
ショウ兄さんはあろうことか、アドバイスまでしてきていた。




