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猪突
「……わかりました」
開始の合図さえ、私に委ねる……
だけど、プライドなんて、今は邪魔なだけだ。
ましてや、相手がショウ兄さんであるのなら……与えられた特権を活かさない理由はない。
「……」
呼吸を整える。
そして、覚悟を決めた。
「――っ」
タイルを踏むと同時に蹴った。
一直線に、ショウ兄さんへと距離を詰める――!!!!
そして、すぐに手が箱に触れようとした。
「それじゃあ、駄目だな。芸がない」
まるで、すり抜けるように箱が消える。ショウ兄さんが消える。
いや、消えたというのは私の錯覚だった。
まるでスライドするように、横に躱された。
いや、そんなことは想定の内だ。
すぐに追って、追って、追って―――
「――あれ」
どうして、追えない?
いや、そもそも、どうして、私は宙に浮いてる?
いや、簡単なことだ。
私はショウ兄さんに足を引っかけられて、倒れかけ、
その体勢のまま押し上げるように足を上げられたことで、前のめりに倒れることになった。
問題は、私がそのことに一切、気付けなかっただけで――――――




