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合図
「不服か?」
「いえ……」
だが、勝負と考えるなら、ルール違反ギリギリではないだろうか。
それを容認するという辺り、これもまたハンデの範疇なのだろう……
「気にするな、事前準備の内だ」
「……では、お言葉に甘えまして、『アクセル』!」
俊敏性を上げる加速バフ…………普段の相手では使うことはないが、
ことこの勝負、そして相手に関しては有用性があるだろう。
「……なんだ、それだけでいいのか?」
「はい」
下手に何重も強化するべきでないと判断した。
普段使い慣れてないことに加えて、余分なバフの効果が切れた時に、気をさきたくなかった。
「なら、いい加減始めるか。
開始の合図は…………そうだな、そこに一つだけ色の違うタイルがあるだろう?」
ショウ兄さんがナイフで指さすように、地面を指定する。
都会だからだろうか、こんな裏路地でも、道路はタイル舗装されてある。
その中で、そういったデザインなのか、灰色のタイルの中に一つ赤銅色のタイルが混じっていた。
「お前が、そのタイルを踏んだら、スタートとしようか」




