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人魚のように
「クリシュナさん!」
私が気功で麻痺を解いたのと、馬車が私のもとにたどり着いたのは、ほぼ同時だった。
「何があったんですか!?」
セレナの言葉で私は自分の姿を見た。
ダメージ自体は大したことはないが、あの少女との戦いで服がぼろぼろの泥だらけになっていた。
「よくわからない――ただ」
「ただ?」
「強い相手だった」
……
近くに湖を見つけたので、魚の確保がてら、水浴びと、服の洗濯を行った。
「――ぷわぁっ!」
私は潜水で湖の魚を取っていた。
「クリシュナさーん!」
水辺で、シンシアさんが手を振っている。
「?」
「お昼にはそれで充分ではありませんのーっ?」
つい、クセで保存食の分も考えてしまうが、昨日、街を出たばかりで食糧には余裕がある。
「そうですね、戻ります」
……
「いい焼き加減ですよ、クリシュナさんもお座りになって」
「ありがとうございます」
セレナとシンシアさんの二人には、火をおこして、魚を焼いてもらっていた。
「ふう……」
私は風魔法で軽く水を吹き飛ばしてから、出されていた椅子に座った。




