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激励
「そうですか。それはそれで初めから勝つつもりのようですが」
「それは――――いや、よそう。これ以上は無駄話だ。
全ては結果が出てから。
それが一番だろう」
「そう、ですね」
私はその前に、と、シンシアさんに声をかけた。
「すみませんが、片付けをお願いします」
今のアームレスリングをどうする以前に、ショウ兄さんに勝たない限り、私達の旅は終わりだ。
そんな中で、一人この場で待ってもらう訳にはいかないし、
勝負内容を考えれば、街を縦横無尽に駆け回ることを想定すると、見守ってもらうことも出来ない。
「……宿で、待っていてください」
宿代くらいは残しているのだろうか……いや、今は負けた時を考えるのをよそう。
そんな中をシンシアさんが意を決したように口を開いた。
「その……こんなことを言っても、プレッシャーになるだけかもしれませんが、
それでも言わせてください。
私はクリシュナさんを信じています。
あなたに全てを賭けます」
「…………はい!期待に応えられるよう、全力を尽くします」
それが精いっぱい。
勝利を約束することなんて出来るはずがなかった。




