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貴族の娘
「え……えっ!?」
なんて、タイミングだろう。
ミカ姉さんの要望もあって、元々、会いにいくつもりだった。
ショウ兄さんは所在がわかっていなかったから、偶然会えたことじたい僥倖だ。
こんな時でなければ――
「兄妹とは言え、契約は契約だ」
「!!」
「その辺り、貴族ならば、実感はあると思うけど、シンシア嬢」
「っ――――た、確かにその通り、です。
ですが……いえ、何故、私のことを?」
「王都で、あなたを救うために妹が大立ち回りしたこと、有名ですよ。
海外にいた自分の耳に入るくらいにはね」
「!」
「しかし、そうやって救われたシンシア嬢は、王都からいなくなった。
そして、この場に貴族の女性がいるならば、当然、妹についていったのだと思います」
「私が貴族だと、どうして……」
「そんなもの、立ち振る舞いを見れば、わかりますよ」
「…………」
「しかし、こんな風に金を稼いでいるあたり、貴族の矜持というものは、ないのですか?」
「し、ショウ兄さん、それは――」
と、シンシアさんは遮るように私の前に手のひらを差し出した。




