絶体絶命
「かふっ!」
背中から、地面に叩きつけられた私は、身動きが取れなかった。
ダメージは母のペンダントが軽減してくれた。
しかし、今動けないのは身体全体の痺れだ。
少女が放った一撃は、纏っていた火の鳥を、はいだところでは収まらず、
麻痺という追加効果ももたらしていた。
「……」
少女はすとん、と軽く地面に着地した。
「くっ……気功操作っ」
動かない身体を無理矢理、気功で動かした。
これは緊急時の対処でしかない。
なんとか起き上がり、剣を構えたが、
今の状態では技や魔法はおろか、剣戟の力加減さえ、ままならない。
有り体に言うなら、ピンチだ。
「……」
「……」
睨みあう私達――今仕掛けられたら、どうしようもない。
しかし、こちらには攻め手がなかった。
気功を巡らせて、麻痺の解除を試みるが、
身体の操作と並行しての作業は難解としか言いようがなかった。
少女がゆったりと腕をさげ、構えを変えた。
仕掛けてくる予感に私は丸く防御姿勢をとるしかなかった。
と、その時、少女の口からつぅ……と血が一筋に流れ落ちた。
「……」
「!?」
動揺は私のもの、少女は流れ落ちた血に一度、視線をやるとすぐに私の方を見据えた。
「くっ!」
こうなったら、一か八かしかない、少女が迫ってきたら、
身体を操っている気功も、麻痺を治そうとしている気功も全て回して、
『気功波』にしてぶつけるしかない。
それで、倒せなければ――おしまいだ。
「――」
少女は膝を低くしたかと思うと、地を蹴った。
「!……!?」
しかし、跳んだのはこちらではなく、後方。
少女の姿はそのまま見えなくなった。
「……逃げた?」
口から血を流していたあたり、少女もそれなりにダメージを受けていたはずだ。
撤退も間違った判断とは言えない。
それでも――
「……助かった」
その事実は消えない。
私は気功操作を解き、膝から崩れ落ちた。




