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電撃作戦
「今さら、やめようなんて言うなよ?
払った千ルドーを拾うつもりはないし、押し付けようとしても受け取らない。
それでも、試合放棄しようものなら、官憲に駆け込もう」
「っ……」
「戦うしかないんだよ」
「――え、ええ、もちろんですとも!」
何か違和感を察知した様子のシンシアさんだったけど、
それでもその正体が掴めず、通常通り続けようとした。
それを聞いて、彼の口元に笑みが浮かんだ。
「そう気を張るな。お前の成長をみたいだけだ、クリス」
彼は聖水に手をつけ、机に肘をついて、その手を差し出した。
私を待つように――
「え、クリ――」
シンシアさんが抱いた疑問をなげかけようとした、その一瞬だった。
助走のように、勢いをつけて、彼の手を取った。
そのまま、押し込む――!!
言うまでもなく、奇襲。これしかない。
だが、厳密には開始の合図も待たず、ルール違反もいいところ。
だけど、彼はそもそも、開始の合図そのものを見ていないはずだ。
後からなんとでも、ごまかせる。
散々綺麗ごとを言っておきながら、とんでもないダーティープレイだけど……
それでも、今、負ける訳にはいかない。




