717/1085
hardruckは突然に
そう言ってくれることは、ありがたい。
だけど……そう。
”急がば回れ”なんて言葉があるように、事を早く進めすぎると、
イレギュラーなことの対応が遅れたりするものだ。
そう、それは完全に想定外だったのだ。
「……と、誰か来ましたわ」
会話をやめて、来た人物を見る。
「へぇ、アームレスリングか」
「!?」
その人物に私は硬直してしまった。
「お兄さん、どう?チャレンジしてみない?」
そんな私の様子に気づかずに通常通りに声をかけてしまった。
まずい、非常時に合図を送る手段を考えていなかった。
慢心していた、それが全ての原因。
いや、今はそんなことはどうでもいい。
こうなれば、声を出してでも、止めなければ。
「……待っ」
「千ルドーか、なら、試しに」
と、彼は、箱にお札を入れてしまった。
「!!」
そして、彼は私の目の前に座った。
「……そんな顔をするなよ。単純な力比べならどうなるか、わからないだろ?」
気づかれてる!?
なら、恥も外聞もない。
こんな勝負、やめてしまえば――
「参加料は払ったんだ。契約という意味ではもう既に結ばれた後だ」
「っ!」




