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詐欺ではなく商売
適度に疲れている振りをしながら、なんとか勝った振りをした。
それで、男は何度もチャレンジをし……手持ちのお金を使い果たしてトボトボと帰っていった。
「……さっきの人、典型的なギャンブルで破滅する人間でしたね」
「なんだか、心苦しいです。騙してるみたいで……」
「……商売には、そういう側面もありますわ。
交渉だって、相手から、より多くのお金を得るために、するものです。
その際に相手の無知を利用するのも、ダーティーであっても有効な手ですわ。
商売とは……資本主義はそういうものだと思っています」
「私が清廉潔白な人間だとは言いませんけど……」
「いえ……クリシュナさんは清廉潔白ですわ。それを私が引き込んだのです」
「そんな……」
「クリシュナさんに嫌なことをさせているのは重々承知してますわ。
その上で、もう少し堪えて下さい。今日中に終わらせますから」
シンシアさんの目には悲痛な色が映っていた。
「そんな……最後まで、付き合いますよ。それが約束です。
だから、そんなに気にしないで下さい」
「……ええ。でも、なるべく早く終わる努力はしますわ」




