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人は限定って言葉に弱い
「そ、今は42万ルドーってところ」
「42万!?」
男はこちらに目線を走らす、その中で私の隣の箱を見つけた。
「なんだ……?千ルドー札が一杯に……」
「そう、それが今の賞金。
元の賞金プラス私達に挑戦して敗れた者達の参加料よ」
「キャリーオーバーって、まさか、参加料も積み重ねてるのか?!」
「もちろん、で、やる?参加料は一律千ルドーよ」
「42万か……試しに千ルドーくらい……」
男は完全にシンシアさんの術中に、はまってしまっていた。
「だけど、それだけの人数を倒したってことだよな?とても、じゃないが、オレには――」
「もちろん、それだけの人数を相手にしたってことでもあるけどね」
「――」
「蓄積疲労は確実にあるね。どこかで負けちゃうかも知れないから、そろそろ潮時かな?」
心にもないことを言う。
まだ、目標額には達していないのに。
「――――ま、待った!挑戦する!」
「じゃあ、そこの箱に千ルドー入れてね」
「よ、ようし……!」
こうして、カモがまた一人、罠にかかってしまった……




