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男の悲劇
と、いう訳でそれなりに拮抗しているふりをしないといけない。
「……」
「じゃあ、準備はいいかな!?」
「いつでも大丈夫だ」
机の上で挑戦者の大男と手を組む。
さて、拮抗といってもどうしたものか……
「レディー・ファイト!」
その掛け声、久々に聞いた気がす――
「ふんっ!!」
べきぃっ!!と音が聞こえた。
「あ」
しまった、やってしまった。
「あぎゃあああああっ!!腕がぁああああっ!!」
大男が地面を転げまわる。
要はこういう話だ。
考えごとをしていた私は、腕を組んだまま動かさず、固定するような形になった。
そこに大男が力をいれて固定した私の腕を押し込んだことで、
大男の腕の骨を自身の力で折ってしまったのだ。
「……」
完全に油断していた。
力を受け流せば、こんなことにはならなかったのだろうけど……
……と、どうしようと隣のシンシアさんの顔色を伺う。
「えぇ……」
シンシアさんは血の気が引いていた。
だけど、この状況はどうにかしないといけない。




