優位上の油断
「……」
少女の構えが深く、体勢が低くなっていた。
自分から仕掛けずに受け手に回ろうという姿勢に見えた。
そっちがその気なら、受けてたつのみだ。
「『隼剣』――」
剣を振り絞る。
相手は同じ攻め手だと思うだろう――
だけど!
「『流星連撃』!」
剣を片手に持ち替え、突きでの高速連撃――
少女は僅かに驚きの表情を見せながらもいなしていく。
だけど、この技はもう片方の手が自由になる!
「『気功波』!」
少女は気功を真正面に受け、吹き飛んだ。
宙に舞う彼女は無防備に見えた。
「『フェニックス・ライド』!」
そして、私は火の鳥を纏い、追撃へ――
「――」
「――」
勝利を確信した。
そう、確信して、しまった。
だから、次への対応が遅くなる――
「――」
「!?」
驚きは私のものだった。
少女は無抵抗だった。
無抵抗のまま、私の『フェニックス・ライド』を受け、上空へ、舞った。
そう、無抵抗で――
時に衝撃は無抵抗で受けることでダメージを軽くすることが出来ることがある。
階段で転んだ赤ちゃんが、受け身を取れないことで逆に無傷で済んだ、という事故もある。
ただ、それを意識的にすることはまず不可能で――
「……『閃沙』――」
――無口だった少女が空中で剣を構えていた。
「!?」
勝利を確信してしまっていた私は咄嗟に対応することが出来なかった。
「――『獄路』」
彼女の一振りにより、私は奈落へと叩き落とされた。




