出来ることの限界
だけど、余計な心配はかけたくない。
私は頭をぶんぶんと振って、悪い想像を振り払った。
「シンシアさんこそ、体調は大丈夫ですか?」
「ええ、頗る良好ですわ」
確かに顔色は悪くない。
だけど、一週間前に私の剣を受けて出血し、
この四日間はほとんど交代役もなしに手綱を握っている。
体調的にも、疲労的にもお嬢様育ちのシンシアさんには辛いと思えるのだけど……
シンシアさんもまた、この旅を通して、肉体的に成長しているのだろう。
「……まぁ、社畜時代はもっと酷い時もあったしね」
「え?」
「なんでもありませんわ」
一瞬、すごく暗い顔をしたように見えたのだけど……反応からして、触れてほしくないのだろう。
「……し、シンシアさん、それでも、無理はしないでくださいね?」
「クリシュナさん……」
「セレナもちーちゃんもこんな状態だからって、シンシアさんが無理することはないですから」
「……ええ、私まで、倒れる訳にもいきませんし」
「そういう意味だけでもないんですけど……疲れたらいつでも言って下さい。
いつでも変わりますから」
「ええ、でも、これは私の役目ですわ!」
そういうと、シンシアさんは手綱を強く握った。




