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嘘だらけの世界
「まぁ、それはそうだろう。
だが、君は殺されると思っていながらも、大人しく、全てを話したのか?」
「……同じ死ぬでも、拷問の末に殺されるよりマシだと思ったからです」
「話したとしても、それは変わらないかも知れないけど」
「っ……!!」
「なんてな、冗談だ。本当に何もしないから、とっとと出ていくんだ」
「あ……う……」
「彼女との約束は守れ。別人として生きる以上、手出しはしない」
「…………」
すると、それまで黙っていたカルマの傍にいた女が叫んだ。
「さっさと出ていけといっている!それとも、本当に死にたいのか?」
「!!……し、失礼しましたっ……!」
ロアンは逃げるようにして、部屋から出ていった。
「……やれやれ、ね。あれだけ深読みしてくるのだから」
女が舌を出す。
「フン……まぁ、忖度されるのは立場上仕方がない」
「それで、正直に話しているのに、真意が伝わらないのは問題だわ」
「世の中、本音で話せる人間はそういない。特にこの世界ではな……」
「それと真逆なのが、あの子なの?」
「ああ、そうだ」




