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笑顔
「もちろんでス」
そう言う、アミテさんの瞳には心からの言葉だという真実味が宿っていた。
「……」
その迫力に思わず言葉が詰まる。
それを知ってか知らずか、アミテさんは話をつづけた。
「ワタシがワタシを失っていタ時、
暗闇の中デ、ワタシを呼ぶ声が聞こえたんデす」
「……!それって、アニスが呼びかけていた時の……」
「真っ暗な暗闇ノ中で、あの子がワタシを呼ブ声が聞こえたんデす。
『お母さん、お母さん』っテ……」
「……」
「それを覚えてイる限り、ワタシはなんだって頑張レるんです」
「……そうですね、きっと」
愚問だったかも知れない。
アミテさんは、母親だった。
母親が母親であることを自覚しているのなら、それは相当な強さだ。
アニスがいる限り、それはそうそう折れるものではないだろう。
そのアニスはというと、アミテさんの後ろに引っ付いている。
耳が聞こえないなかで、私達の会話をどこまで理解していたかわからない、けど……
「もう大丈夫だね、アニス」
アニスは、まるで大きな向日葵が咲いたように笑顔になった。




