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実感と時間
「その身体で生きていくことを、どう思っていますか?」
どことなく、興味本位的な言い回しだけど、
深刻な言い方もしたくなかった。
「……」
アミテさんは値踏みをしてるかのように、私を見据える。
しばしの沈黙。
だけど、僅かでも耐え難い静寂に耐えられず、再び口を開こうとしたところで――
「死ぬコと、幼いアニスを残シて、この世を去ル無念を思エば、こうしテ生きテいるだけデ、幸せです」
その台詞には、お腹にずどんとくるような重みがあった。
「これからのこと……覚悟はあるってことでいいですね?」
「こうして、生キているからコそ、生まれる悩ミですから」
アミテさんの返答はどこまでも、真っ直ぐだった。
だからこそ、危うい側面もある。
今はその実感があるからこそ、そう考えることが出来るけど、
時間と共に、実感が薄れ、負の側面ばかり目についてくるようになる……
その時も同じ気持ちでいられるのか……それはわからない。
けど――
「その気持ち、忘れないで下さい。アニスのためにも……」




