血を見たのは、彼女だった
「うっ!?」
三度目の発動。
連続の酷使にも、母のペンダントは応える。
だけど、今度は前後の二方向から。
元々、アクセサリーに過ぎないペンダントでは広範囲には守れない。
私は必死に手首を返し、振り下ろす先のシンシアさんを剣先から避ける。
ペンダントは私の意思を汲み、チヒロの剣を受け止める。
そして、私は剣を反らす――が、完全な回避には間に合わない。
「ああっ……!!」
剣先がシンシアさんの右腕に引っかかる。
腕を両断するような大事にはならないものの、
一度としてそんな怪我を負うことのなかったであろうお嬢様の白い細腕を刃が裂き、赤い血が舞った。
「…………!?」
「シンシアさんっ!!」
彼女を斬ったのは私だ。
それでも、衝撃でよろめくシンシアさんを真っ先に抱き止めたのは私だった。
「うぅ……大丈夫ですわ。これくらい、かすり傷です」
「なにをそんな強がりを……!」
回復魔法で傷を塞ぐ。
大量出血さえ防げば、命に別状はないだろう。
でも、傷跡が残るかどうかはわからない。
「なんで、こんな無茶を……」
そうでなくとも、反応が少しでも遅れれば、致命傷になっていた。
それこそ、この手でシンシアさんを殺すようなことにもなりかねなかった。




