681/1085
私が必要だった人
一拍の溜め、呼吸。
絡むように互いの視線が交わる。
弓のように、限界まで引き絞った溜めは、今か今かと解放の時を待つ――
次の瞬間には決着がついてもおかしくない、この瞬間。
されど、この一瞬はまるで、永遠。
その永遠の時の中で私は全て理解した。
私に必要だったのは、”チヒロ”だ。
実力が拮抗しつつも、どこかで勝り、どこかで劣る。
互いを高めあえる好敵手。
惜しむべきは、相手がとても正気だとは言えないことと、
決着の時には、どちらかが命を落としても仕方がないということ。
だけど、それも実力の拮抗した者同士のぶつかりあいなのだから、致し方ない。
互いの全身全霊を賭ける他にないんだ。
「――『無形の型』」
「――『獄路』」
出会った時に一度だけ見た技。
あの時は訳も分からずに喰らったけど、
それでも一度見た技だ。
それならば、それを乗り越えて、
私は―――――――勝つ――!
「そこまで、ですっ!!」
「っ!?」
「!」
目の前の敵だけに集中を裂き過ぎていた。
余りに未熟。
故に、間に入るシンシアさんに気付いたのは、まさに、剣のぶつかりあう射線上に出てからであった。




