想像の中で
夜が明け、十分に陽がさしてくると、私達は再出発した。
昨日と同じく、セレナとシンシアさんが交代で手綱を引き、
私は想像の中でラン兄さんと戦い続けていた。
ありとあらゆる攻め手、防ぎ手を想像する。
そのあらゆる全てを持ってしても、『無形の型』を突破出来ない。
それでも、ひたすらに頭の中で戦い続けていた――――
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駄目だ。
そんなにすぐに出来る宿題とは思っていなかったけど、とっかかりさえ見つからない。
それは、身体を動かしてやったところで、同じことだ。
私一人では、これ以上何もないのかも知れない。
地道な修練も重要だと思うが、今はなにか劇薬が必要なのかも知れない。
強敵との会敵とか――
「あれ、なんでしょうか?」
「なんですの?」
「ほら、道の先に人が集まって…………倒れてる?」
セレナの言葉が気になって、私も馬車の荷台から乗り出して、見た。
「本当だ、あれは……もしかして、野盗?誰か、取り囲まれてる!」
「えっ!?」
「二人はここで待ってて!私、行ってくる!」
そう言って、私は荷台から飛び出した。
馬車からの距離は1.5kmというところだった。
「こんな時に、言う言葉ではないのでしょうが……」
「なんですか?」
「お二人とも、大変目がよろしいんですのね……」




