何で語るか
「…………ワタシと戦うつもり?」
一瞬、正気に戻ったのか、ともとれそうで……チヒロの目は焦点が定まっていなかった。
「あなたが、戦うのなら」
「モンスターと戦うのを咎めるつもり?」
ああ、このやり取りだけを切り取れば、本当に正気を取り戻したように見える。
「アミテさんはモンスターじゃないです。モンスターはこの世界には、もういないんです」
「……ふっ」
だけど、正気の人間が果たして、友人の首に剣先を突きつけようとするだろうか。
「モンスターに惑わされるなぁっ!」
突きつけた剣を私の首に向いたまま引こうとしたところで、いよいよ私は突き飛ばした。
「冷静に……冷静になってください……!」
私も一歩後退し、互いに見合う距離になる。
「……冷静?ワタシはずっと冷静にモンスターを排除しようとしてるんだ」
「だから、アミテさんは――」
話をしようにもずっと平行線だ。
このままじゃ埒があかない。
そう考えたのは、チヒロも同じだったようだ。
「もう、いいよ。こうなったら、目を覚まさせてあげるよ」
「…………それしかないん、ですね」
元々、言葉が通じない相手だとは思っていなかった。
だけど、その言葉が通じない以上、いよいよ剣で語るほかなかった。




