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盾
私自身も、忘れかけていた――
いや、存在自体は覚えている。
だけど、その”本来の”存在価値。
意味。
今まさに、貫かんとしている剣と対となる存在を――
静止した刻の中で、私の想いに応えるように、青い光が私を包んだ。
そして、次の瞬間、自ら意思を持ったように、私の胸元からそれは飛び出した。
青い結晶のペンダント――旅立ちの日に母から貰ったものだ。
ある意味では、父の剣とは対となる存在。
しかし、その真意においては未だに発揮はされてこなかった。
少々のダメージなら防ぐと言っていたが、
そもそも、私にそれだけの攻撃を与えれるものは少なく、
与えれる者は少々では済まない以上、多少の軽減も実感としてはあまりなかった。
恩恵は受けていたのだろうけど、それが日の目に見ることはなかった。
今、この瞬間までは――
これは私が発動させたものではない。
母の祈りによる術式だ。
故に私自身の反応速度は関係なく。
ペンダントは私の意思に応え、私の剣の前へと、立ちふさがるように、動いた――




