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刻の流れ
脳の回転はさらに加速。
それでも、方法はない。
どれだけ考えを巡らし、思考速度で、体感を緩やかにしても、
ほんの数瞬先の惨事を食い止める術はない。
それでも、脳は加速しつづける。
肉体では間に合わなくとも、脳――頭では、その速度に追いつくように――
追いついたところで、どうにかなるとは限らないが、それでも思考は加速する。
そして、刻は止まった。
いや、厳密には止まった訳ではない。
ただ、思考の上において、止まったかのように、緩やかに感じているだけ。
武道の達人や『スポーツ選手』が所謂、”ゾーン”に入った時のようになっているだけだ。
それを私は引き起こしていた。
――それがなんだと言うのか?
一瞬の斬り合いだったりの話なら、この制止した時間も有効だろう。
方向だったりを判断し、動かすくらいなら――
だけど、今はその判断の時間は当に過ぎている。
どれだけ、時間を圧縮したところで、肉体が追いついていないのなら意味はない。
だから、この時間は全くの無駄だ。
時間があるからこそ、わかる。
自身が手詰まりであるということに――
――
――――
そう、私自身は、だ。




