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選ぶのは彼女だ
「――――」
逆に言えば、私にとっては”仇”ではない。
アニスが真実を知った時、どういう感情を抱いたとしても、
ここで私が手を下したり、約束を反故にしてロアンが消えた時、
その感情は行き場を失ってしまう。
それにこれに関しても、彼の大切な人は関係のないことだ。
「………………あなたに報いが降りかかるとしても、それは私ではない、です。
それはあっては、ならない。
あなたのためではなく、あなたの大切な人の為に約束は守りましょう」
それが私の絞り出した答えだった。
アニスが復讐鬼に身を堕として欲しいとは思わない。
それでも、それを選択するかどうかは彼女次第だ。
私がそれを選択してはいけないのだ。
「……ありがとうございます、でいいのかな?」
「あなたから礼を引き出したい訳じゃないです」
「欲しいのは情報……真実を、ですか」
「わかってるなら、早く話してください……!」
「そうですね……一から話すとしても、何から話したものか……
そもそもどこまで、わかってるんですか?」




