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信頼の証明の難しさ
「要は、人と同じ成分の肉塊を作るだけですよ。命そのものを生み出す訳ではないです」
「魔法は専門外ですが、あなたがとんでもないことを言ってることはわかりますよ」
「ああ……別に無からも生み出しませんよ。
多少は食糧の備蓄がありますよね、それの成分を組み換えて、人の形に近づけるだけです」
そう説明したのに、ロアンの表情は信じられないと言ったものだった。
「……だと、しても、そんな方法があったとして、
あなたがそれを行使するって保証はあるんですか?」
「私は無駄な血を流したくはありません」
「それを信用出来るかって問題です。全てを話したあとに裏切られたら、取り返しはつかない」
「……」
確かに私とロアンの間において信頼なんてものはなく、私の言葉を全て信用出来ないのだろう。
私としても、嘘偽りのない感情なのだけど、ロアンがどう受け取るかはロアン次第だ。
ロアンにとっては、一度は捨てることさえ覚悟した命だ。
私の視点からはウィンウィンの提案だと思ったが、ロアンは裏切られる可能性があると思っている以上、
簡単に頷けないのだろう。




