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一人の力
アル兄さんの言葉を思い出す。
選択肢が生じた時点で、全てを救うことは出来ないのだ。
どちらかに天秤を傾ける必要がある。
ミカ姉さんに言われていたことも、脳裏によぎる。
組織に対抗するなら、組織力がなければならない。
私一人がいかに強かろうとも、別々の場所にいる人間……ましてや、所在も詳細もわからない人間を同時に守ることは出来ないし、ずっとそうしていられる訳でもない。
セレナの時ほど向こう見ずに行動も出来ず、スムーズに事が終わる訳もない。
マフィアが関わっていたとわかった時点で、首を突っ込むべきではなかったのか……
「…………ィ」
そこまで考えたところで、私は奥歯を強く噛んだ。
「そんなもの、クソ喰らえ、です……!」
だと、しても、だ。
私が何をしようとしまいと、アニスの境遇は変わらない。
そして、今、アニスを助けられる位置に一番近いのは私なのだ。
だとしたら、アニスを助ける為に動くのは決定事項だ。
それにより生じる被害は……無理矢理でも、食い止めれるよう、どうにかする他ない。
出来ないんじゃない、無理でもなんでもやるんだ……!




