636/1085
真実はかくも我らを追い詰める
駄目だ。そんなこと聞いていない。
「考えたことありませんか?自分達のような非合法組織は簡単に裏切られたら困るんです」
聞いていないことを、話さないで欲しい。
「だから、裏切り者には凄惨な報復を……そうすれば、恐怖による統制が出来ます」
余計なことをベラベラと、解っていてもいなくてもタチが悪い。
「拷問されて、殺されるとしても同じなんです。ただ、組織に報復なら、自分だけでは済まない」
そんな言葉を並べられては、私は何も出来ない。
「……なら、あなたのお仲間はどうなんですか?彼らは口を割りましたよ」
「彼らは彼らで、自分は自分です。
組織の”ルール”を理解していないのか、目先の自分の命が大切なのか、はたまた大切な人がいないのか理由はそれぞれでしょうけど」
「…………」
ロアンの言葉を嘘だと断定するのは簡単だ。
そう思い込むだけで済む。
だけど、仮にその言葉が真実だとしたならば……私の行為により、彼らと彼らの”大切な人”は地獄を見るのかも知れない。
私は今、選択肢を迫られていた――




