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期待していない返答
「っ!」
私はロアンの首根っこを掴み、無理矢理、引き上げた。
「私が……私が口だけでしないとでも、思ってるんですか……!」
「……まさか」
ロアンは力なく笑った。
「…………、あなたの口を割る為に苦しめることだって……!」
「拷問か、それは厳しいですけど……口を割らすには猿ぐつわをずっとする訳にはいきませんよね。
そうなれば、どこかで舌を噛んで死にますよ」
へへっと笑うロアン。
私は手を離すと、ロアンは再び床に叩きつけられた。
それでも、ロアンは笑みを崩さない。
まだだ、方法はまだある。
魔法で催眠状態に出来れば、多少融通が利かなくとも口を割らせることは出来るはずだ。
「一体、どうして、非合法組織のためにそこまで……!」
思考の合間に漏らした愚痴、それだけに過ぎず、返答は期待していなかった。
だけど、ロアンはそのことに関してだけ、律儀に返答したのだ。
「違いますよ。組織の為じゃない」
「……え?」
「組織の報復を……起こさないため、ですよ」
「…………」




