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構成員の献身
「あなたの部下達は、全て喋りましたよ。次はあなたが知ってることを全て話すだけです」
結局のところ、下っ端の三人は事実関係はともかく、その理由までを把握していなかった。
ならば、それ以上の”理由”はロアンに聞きだすしかない。
「くくっ……部下?自分はただリーダー役なだけで、階級としては同じですよ」
「そうですか。でも、そんなことはどうだって、良いんです。
あなたはあなたが知っていることを全て話せば――」
「――話さない」
ロアンは床に転がったまま、にやりと笑った。
口の端からは血がこぼれていった。
「話せません。どうぞ、殺してください」
「っ――」
正直、予想外だった。
自己の保身を考えてもそうだし、
こういった組織の構成員に忠誠心をもった存在がいるとは思っていなかった。
ましてや、自分の命さえも差し出せるとは思えなかった。
「……そんな、ハッタリが通じると思ってるんですか?」
「ハッタリかどうかなんて、あなたにはわかってるんじゃないんですか?」
確かに彼の言葉には真実味が伴って感じれた。
だからこそ、その感覚こそが信じられなかった。




