暗躍するモノ
――アルベルト王子は王宮の地下牢に閉じ込められていた。
ただ、王子――裁判が終わるまでは王位継承権が剥奪されないことから、
牢の中ながら、ソファーやベットといったアルベルト王子の私物に囲まれていたが――
「――アルベルト」
「驚いた、どうしてここに――――いや、今更、か」
「随分と贅沢なのね」
「それは皮肉かい?それとも正直な感想?」
「嫌味よ……嫌になるわ、牢の中でさえ身分差っていうものを見せつけられると」
「ふん。僕がこんなところにぶち込まれなければ、そんなこともなかったさ。
それより、ちょうど聞きたかったんだ、どうして、シナリオに背いたんだ?」
「シナリオより、優先する事項があったから、よ」
「それって、シンシアと一緒にいた女のことか?」
「さて、ね。今のあなたには話せないわ」
「ふん!シナリオに背いてまで、よく言うよ」
「あなただって、シナリオに背いてアンヌを殺したでしょう?自分の目的の為に」
「……」
「結局、ここにいるのは身から出た錆なのよ」
「……だとしても、そうでなければ、協力なんてしなかった」
「まぁ、こちらとしては問題はないわ。
あなたのことも含めて、今回のことには、シナリオの修正力が働いている」
「それじゃあ、僕の計画は……」
「そうね、今後のシナリオ次第だけど、ベルグマン王子が命を落とす可能性はあるわ」
「そうか、だったら、よかった」
「……わからないわね。自分の目的のためとは言え、血を分けた兄弟の死を願うなんて」
「ふん、兄弟なんて良好な関係ばかりじゃないんだ。僕とアイツは子供の頃から憎しみあっていた。
それだけのことさ」
「そう……じゃあ、せいぜい王位継承権を失くさないように立ち回りなさい」
「ああ、なんとしても、ね」
「だけど、下手なことはしないことね。
あなたの側からシナリオに影響を与えるのはこれ以上、許さないわ」
「わかってるさ……わざわざ、その釘を刺しにこんなところまで来たのかい?ご苦労だね」
「……次会う時に、またその減らず口を叩けたらいいわね」
「お互いさまだよ、それは」




