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磨き上げて
雑草を全て抜き終わったくらいで、シンシアさんは戻ってきた。
バケツには水と一緒に雑巾も用意されていた。
そのあとはシンシアさんが組んできた水と雑巾を使って、墓石を磨いた。
こびりついた汚れもあったけど、根気よく磨き上げて、墓石は染み一つない姿に戻した。
その後は手近ながら、近辺に咲いていた花を摘み供え、足を折って冥福を祈った。
シンシアさんは、手を合わせていた。
「……アミテさん、聞こえていましたら、アニスをお守り下さい」
死者に念を飛ばすのは愚行だろうか?
でも、もし、それで、アニスに加護が宿るならば、それに勝るものはないと考えれた。
充分に祈った後、私は立ち上がった。
「行きましょう、シンシアさん」
「ええ……ですが、収穫はありませんでしたね」
アミテ・アニスの親子が迫害を受けていたのはわかりきっていたことだ。
それを考えれば、墓の惨状は予想出来たことだ。
心情的な面はともかく、このことで事態は進展はない――――と、思いかけていた。
「いえ、あるかも知れません」
「え?」
およそ、8人。
遠巻きに私達を見ている人間達がいた。




