その悪意の名は
「垂直……?」
それはつまり、放物線を描くように放った訳ではなく、明確に狙いをつけて”射出”した……?
「そもそも、窓を突き破って、勢いを殺さずにアニスちゃんにまで到達したんだよ!?
それなりの威力はあるはずだよ!」
そうだ。そうなるとするなら……
「夜間とは言え、気付かれないよう距離を取ってるはずです。
仮に至近距離なら、すぐに向かった私が犯人を見つけていたかも知れない。
そう考えると……それなりに距離がある場所から、”射出”したんだと思います」
「それ……普通の人には無理ではないのですか?」
そう、少なくとも気功や魔法でも使わなければ、
小屋の奥にいるアニスに当てるところまでは出来ないだろう。
「きっと、石を射出出来る道具か仕掛けを用意して使ったんだと思います」
「それ……単なる嫌がらせにそこまでする?」
「絶対ない、とも言い切れませんが、あまり考えられませんね」
少なくとも、集落にいる人間がそこまでの”手間”をかけるものかという疑問が浮かぶ。
単なる嫌がらせなら、それこそ、石を投げ込むだけでいい。
これではまるで……
「まるで……アニスへの”明確な殺意”さえ感じる……」




