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改
仮に……仮にラン兄さん”同士”が同じ手段で打ちあえば、『無形の型』を放った方が勝つだろう。
初撃は二撃目への起点、しかし、それをおろそかにすれば、『無形の型』は成立しない。
「……」
ふと思いたち、剣を片手持ちにして半身の体勢に、そして、敢えて後ろ手で持つ。
実戦ではまずしない、構えだが……仮にこの状態で技を放ったらどうなるだろうか?
空の左手に気功を込め、『私』へと距離を詰める。
そのまま殴りかかると見せかけ、半歩バックステップから、後ろ手を振り上げ脳天へと振り下ろす。
初撃を受け流す意思を持った私であっても、フェイントで技の射程距離を誤認させた中での真正面攻撃。
受け流せず、受け止めざるを得ない。
インパクトの瞬間、あえてリストを軽くし、弾かれるのを起点に回転しながら二撃目へ――
『私』の反応は間に合わず、胴を薙ぐように剣が打ち込まれる。
「出来た……?」
いや、厳密には本来の動作と比べて余計なモーションが多くて、より不完全なものになってしまった。
しかし、『無形の型』の真意にはこちらの方が近づいた。
さしづめ、『偽・無形の型・改』と言ったところか……




