私と私
私に足りないもの……勿論、速度や技のキレ、速度が及ばないのが充分理解しているけど、
それとは別に何かないだろうか?
『私』の姿を目の前に思い描く。
『偽・無形の型』を放ってくる『私』――
当然、同じ技を放てば引き分けに終わるか、調子がいい方が勝つだろう。
この場合、引き分けにしたところで、相打ちもある以上、防いだとは言い切れない。
そもそも、『無形の型』の突破口を探す上では不必要な考えだ。
故に、他の方法を探す。
『私』が振り下ろす初撃――
同じ私ならば、回避出来るというものではない。
受け止めるしかない……
……いや、受け流すとどうだろう?
「……」
『私』は僅かに体勢を崩した。
故に起点が不完全だ。
そこからの二撃目は必殺とはならず、躱すことが出来る。
だけど、これは技量の問題ではないのか?
私自身の剣ならば、私は受け流すことが出来るが、ラン兄さんの剣では不可能だろう。
初撃を受け流すなんて、早い内に考え付き、試して駄目だった。
だから、これは意味のない――
「……あ」
いや、技術……?
そもそも、仮にラン兄さん”同士”でも同じことが起るのだろうか?
それを技術の問題だと切り捨ててしまえば、『無形の型』の真意から遠のいてしまうのではないのだろうか?




