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隠しきれぬ悪意
「なるほど、それで、他には何かありますか?」
「生前のお母様……アミテさんは調剤師……独学で学んだ薬剤師として、生計を立てていたそうですわ」
「……!それって」
「うん。薬学の観点から、その”アンデッド”のことに気付いた可能性はあるね」
「それに、薬を扱う立場の人が病死というのも……あるにはあるのでしょうが」
「キナ臭いものを感じますね」
「ただ、アミテさんの情報は全て、アニスさんの言葉……発言に尽きますますわ」
「証拠となるものは全て消失してると思う」
「何故です?」
「……」
シンシアさんがちーちゃんをじっと見た。
シンシアさんが口にするのを憚れるようだった。
それを察したように、ちーちゃんは口を開いた。
「……火事だよ」
「え?」
「集落にあったアニスちゃんの生家は火事で消失しているんだ。
それが、集落から離れる決定打になった」
「それって……放火なんじゃ!?」
「証拠はないよ。でも、恐らくは……ね」
「……」
そうであって欲しくはないと考えた。
だけど、それだけの悪意が既にあるなら、
あんな小さな子への投石も当然あるだろうと、腑に落ちてしまった。




