天然モノ
「楽になったのだったら、不要かも知れぬが……せっかく作ったのだから、食べていきなさい」
そう言って、ラン兄さんは持っていた器を差し出した。
「あ、薬草粥」
「ああ、精がつくように鶏肉と薬味を多めに入れてある」
「ありがとうございます」
私は差し出された粥を一口食べた。
「あ……この味、懐かしい」
風邪の頃に母が作ってくれた薬草粥と同じ味付けだった。
「ん……そうか」
「作らせるって言ってましたけど、ラン兄さんが作ってくれたんですね」
「……」
ラン兄さんは首を掻きながら、そっぽを向いた。
照れている時のラン兄さんの癖だ。
「セレナも一緒に食べよう!美味しいんだよ、これ」
「ん……れんげはその一つしか持ってきてないが」
「大丈夫ですよ。ほら、セレナ、あーん」
「えっ……あ、あー……ん」
私が差し出した粥をセレナはゆっくりと咀嚼した。
「おい、クリスは気にしないかも知れぬが、セレーナ殿はそうとも限らんのだぞ?」
「そうですか?でも、口移ししたこともある仲ですし」
「!?」
「!!」
セレナは急に顔を真っ赤にした。
「どうしたの?」
「い、いえ、なんでもないです……」
「……あれ、ラン兄さん?」
ラン兄さんは鼻を押さえていた。
「……鼻血ですか?」
「う、うむ。少し、稽古に力を入れ過ぎたようだ。」




