意地
初めの内は理解することさえ叶わなかった。
十回目でやっと、一度の振りではなく、脅威的なスピードで、放たれる二度の振りだと気付いた。
三十回目、少し真意に気付く、初撃の真正面さは、あえて受けさせることにより、
次の一振りを通す為の起点になっていると。
四十回目、気付いたところで対処は出来ない、真正面から来る以上、受け止めざるを得ない、
回避に専念しようとしても、必ず二度の振りのどちらかに捕らえれられる。
四十七回目、集中力が限界に来ていた。だけど、まだ終われない。
まだ、この技の真意に至ることさえ出来ていないのだから。
六十四回目、かろうじて掴んだ。
初撃をどんな防ぎ方、躱し方をしても、変幻自在の二振り目が此方を捉える。
故に無形――回避不能の二振りで確実に此方を仕留める必殺の技だ。
八十二回目、理解したところで破る手立てはなかった。
剣技、気功、魔法……どんな方法も掻い潜り、あるいは突き破り、此方を捕らえてくる。
九十九回目、ついに肉体の限界が来る。
集中力の代わりに保っていた根性も身体が使えなければ意味はなかった。
「はぁ……はぁ……」
ついに私は膝をついた。
「……潮時か、理解は出来ただろう、今のクリスではどうにもならないということも」
「……そう……ですね……悔しいですけど」
「そんな状態では、出発は出来ないだろう。栄養のつくものを作らせよう。
それとも、出発は延期するか?」
「いえ……今日発つことは変えません」
「では、少し休んでいなさい」
「はい、ラン兄さん……」
「うん?」
「ありがとう……ございました……」
「うむ」
私は背中から倒れ込むと、すぐに意識を失った。




