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セレナの想い 後編
「せ、セレナ!?」
「わたしは……クリスさんに助けられてから、クリスさんと離れるのが不安で仕方ないんです!」
「あ……」
セレナはそれまでずっと奴隷として酷い目にあっていた。
その反動で、私に依存するようになるのはおかしなことではないだろう。
「そう……だね、じゃあ、それでいいと思うよ」
「でも……!わたしは安住の地なんて考えられなくて……!」
「うん。だから、考えられるようになるまで、一緒にいようよ」
「そんなの、いつになるかわからないんですよ!?」
「いつだっていいよ。ゆっくり……ゆっくり、前に進もう」
「でも、クリスさんにはやることがあるんでしょう!?
わたしはその邪魔になるんじゃないですか!」
「そうかな?今回のシンシアさんのことだって、セレナがいいきっかけだったよ」
「クリスさん、貴女はどうしてそんなにも……」
「セレナ……?」
「ごめんなさい、落ち着くまで……落ち着くまで、もう少し、こうさせて下さい」
「セレナ……」
私は優しくセレナの髪を撫でた。
夜風が吹くと、撫でた髪がふわふわと浮いて、まるで神秘的なものに感じた。




