セレナの想い 前編
「王都は働き口はいくらでもある。君が望むのであれば口利きをしよう」
「ランパードさんが……」
「あるいは、ここでメイドを経験してみるかい?
メイドの下積みの経験は他の業種でも活かせるし、
肌に合うようなら、給金の高い貴族や王族へも紹介出来る」
「……そう……なんですね」
そう言うセレナの表情はどこか迷っているようだった。
「セレナ……?」
「決して悪い話ではないと思うのだが」
「はい……ありがたいお話だと思います。ですが……」
「何か思うところがあるのかね?」
「そういう訳ではありませんが……少し考えさせてもらえますか?」
「ふむ……結論を急ぎすぎたか、だが、クリスは……」
「はい、わかっています。明日までに結論を出します」
「そうか……まぁ、セレーナ殿自身の人生だ。よく考えなさい」
「ありがとうございます」
……
夕食が終わると、セレナは部屋の窓を開けて夜風に当たっていた。
「あんまりそうしてると風邪をひくよ」
「あ、すみません、寒かったでしょうか?」
「私のことはいいよ。それより、迷ってるんでしょ?」
「迷い……そうなんでしょうか?」
「え?」
「わたしがどうしたいか、それは決まってるんです」
「だったら、その通りに……」
「迷惑かも知れない……そう思うとどうしても……」
「私と一緒に行きたいってこと?それなら、別に――」
と、次の瞬間、セレナは私に抱きついた。
「せ、セレナ……?」
「わたしはただ……貴女と離れたくないんです!」




