かつての勇者譚 10
そして、それは逆でも同じことだ。
決着は、チヒロか魔王の死以外なく、直接二人がぶつからない限り、互いに消耗戦にしかならない。
だから、チヒロ達は無駄な血を流さない為に――早期決着、魔王への決戦を挑んだ。
「……つまりは魔王にも同じことが言えたんじゃないの?」
「え?」
「魔王だって、同じことを考えるはずだよ。どっちにしろ、わたしと魔王がぶつかるしかない。
消耗戦の後の決着なんて、なにも残らないことがわかっているなら……」
「いや、それはチェス盤上での思考でしかないんじゃないか?」
「え、どういうこと?」
「感情を考慮してないってことさ。魔王の思考・人格はわからないが、魔王って利己的なイメージだろ?
他のモンスター共がどうなっても構わないと思っててもおかしくないんじゃないか?
仮に支配するつもりの世界が滅びていたとしても、自分の身の方がかわいいと考えるかも知れない」
「……確かに、そうかも知れない」
そうは口にしつつも、チヒロは魔王はそうではないのではないかと感じていた。
ただ、あくまで直感じみたもので、論理的な言葉では説明出来なかった。
「……だから、魔王を試してみない?」




