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かつての勇者譚 8
「はぁ……はぁ……大丈夫か、みんな?」
「俺はまだ戦えるぞ」
そうは言うアレックスだったが、手入れもままならない環境で、斧も槍もハンマーも消耗し、
気休めに切れ味の落ちて、なまくらと化した剣を持ちながら、ほとんど身一つで戦っていた。
故に肉体も、その身を守る鎧も限界に来ていた。
それでも、彼は身体が動く限り戦い続ける。
「僕は大丈夫だけど、聖水のストックは?」
大丈夫、と言うがリチャードは指示がなければ、仲間の傷に気付けないほどに疲労していた。
「……あと三本、これでラストだ」
レオンは最後の聖水を差し出す。
右手で差し出すが、その右手も震えていた。
それだけでなく、ボウガンの矢は全て撃ち尽くし、
ロープも全て消耗し、左手を縛っていた最後のロープを使っている。
「強がりばっか言ってないで、正直に疲れたっていったら、どう?
とても、余裕あるようには見えないけど?」
そういうミーナも例外ではない。
先ほどから使う魔法は、戦いの中で生まれる瓦礫を操作するものばかりだった。
それは魔法を節約している訳だが、どちらかと言えば節約せざるをえないというほうが正しかった。




