かつての勇者譚 7
最深部に近づけば近づくほど戦いは激しさを増していく。
普段であれば、一体いれば、それを討伐することが目標になるような、所謂”ボスクラス”。
それが、行く手を阻む雑兵のように立ちふさがる。
「でやぁっ!」
アレックスの捨て身じみた体当たりに、赤いドラゴンは一瞬怯んだ。
「今を逃すな、ミーナ!」
「『ロックマシンガン』!」
レオンの指示に従うように、ミーナは間髪あけずに、瓦礫をドラゴンに撃ち込んでいく。
そして、全てを撃ち尽くすと、ドラゴンはぐらりと倒れる……直前に足を踏み直し、踏ん張った。
「!」
「ォォォォオッ!」
ドラゴンは息を大きく吸い込んだ。
それは、炎のブレスを吐く直前の予備動作に他ならない。
「リチャード、トドメを!」
「はぁっ!」
リチャードは聖水の瓶をドラゴンに向けて放り投げた。
「『破ぜろ、そして貫け、汝は槍也――』」
リチャードの詠唱に従い、聖水の瓶が空中で割れたかと思うと、
聖水は四方八方上下左右から、ドラゴンの身体を貫いていった。
「……ググッ!」
ドラゴンは既に死に体だ。
それでも最後の意地か、中の炎を吐きだそうと、口を開こうとする――
――のをレオンのロープが縛りつき、それを許さなかった。
「悪いがそれを余分に喰らう訳にはいかない」
ドラゴンは遂に力尽き、倒れた。




