かつての勇者譚 4
…………
「本命はまだか……っ!」
魔王城に潜入して3時間半は経っていた。
手薄になっていると言っても、そこは敵の本拠地。
数は少なくとも、実力の持ったモンスター達がパーティーを消耗させていた。
「『リペアフィールド』」
隊列の中央部、薄緑色の神官服を着た僧侶が杖を掲げると辺りに光が降り注ぎ、仲間達の傷を癒していった。
「よし、ありがとう、リチャード。これでまだイケる」
「……レオン」
「なんだ?」
「聖水のストックは充分あるよね」
「それは当然だが……まさか!?」
「うん、回復役に徹していたけど……僕も戦うよ」
僧侶リチャード……若干11歳にして、現世において最高位神官の座を手に入れた通称『神の遺児』
ミーナに引けを取らない……いや、それ以上の魔法燃料貯蔵量を誇る勇者パーティーの回復役だが、
聖水を用いたオリジナルの聖水魔法で戦うことが出来た。
しかし、いくら魔法燃料の貯蔵量が多いとはいえ、回復役をこなしながら戦うには……
「駄目だ、負担が大きすぎる。お前が機能停止するとパーティーの生命線がいなくなるのと同義だ」
「生命線?それは、僕じゃなくて、チヒロでしょ?」
「っ!」




