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かつての勇者譚 3
「先を急ぎましょ」
そのまま、ミーナが先導しようとする。
「ミーナ、攻撃をしたなら下がれ、前は危険だ」
「なによ、私に撃ち漏らしがある訳ないじゃない」
アレックスを無視して、先に進もうとするミーナ。
「待て、動くな!」
それを制止したのは一番後方で鞄を背負った男だった。
「レオンまで、悠長にしてる暇は……」
「すぐ先にトラップがある。俺が解除するまで動くな」
「っ!」
冒険家レオン……戦闘をこなすことも出来るが、主な役割は裏方。
その実は司令塔役でキャンプの設営や洞窟や拠点での罠の解除など直接的な仕事は地味だったが為に、
彼に二つ名のようなものはない。
しかし、戦闘中の指示なども彼が担当しており、縁の下の力持ちとしてパーティーを支えていた。
「よし、通っていいぞ。だが、余り先行はするな。隊列は基本守れ」
「わかってるわよ、そんなこと!でも、悠長にしてられないでしょ?」
「だが、足並みは揃えなければならん」
そして、レオンはこうして、時々規律を乱しがちなミーナを窘める役も担っていた。




