かつての勇者譚 2
「なんなら、露払いは全部俺に任せてくれていい」
「ちょっと、ここは魔王城よ?いくらなんでも一人じゃ無理よ」
「だが、俺は継戦能力の高さがウリなんだ。
ミーナ達にも本命まで魔法燃料を節約してほしい」
「……でも、敵はそうはさせてくれないようよ?」
「……!」
パーティーの前方に巨大なスライムが四体鎮座していた。
「スライムか?だが、いかに大きくともこの程度」
「待って、アレックス!」
巨大なスライム達は身体を持ち上げたかと思うと、その真の姿を見せた。
「これは……ゴーレムか!?」
「……スライムとゴーレムの混合種、どちらも物理方面に強い種ね。
だったら、ここは任せて」
後方に控えていた魔法使いが、アレックスから半歩前に踏み出した。
「『インフェルノバスター』!」
巨大な火炎がスライムゴーレム達に襲いかかる。
スライムゴーレム達は上半身を炎で吹き飛ばされてなおも、前進をする。
だが、その辛うじてのこった下半身も、なおも浴びせられる炎と吹き付ける熱風が焼き尽くした。
「ミーナ……」
「強襲に時間はかけられない。
チヒロの温存はわかるけど、あたしらは出し惜しみなんて出来ないでしょ」
魔法使いミーナ……当時の最高位魔法学園で創立以来の『天才』だと言われていた。
長身で長い髪をなびかせるクールな見た目をしている割に、
子供っぽい論調で話すギャップが印象的だった。




