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かつての勇者譚 1
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チヒロは、勇者だ。
勇者というのだから、その対となるべき魔王もいた。
そして、初めてチヒロが魔王と対峙した時、世界は滅びるかどうかの瀬戸際にいた。
ゴンド歴1999.6.17
魔王軍と人類軍は大規模衝突し、1週間が経っていた。
互いに大きく数を減らし、消耗した中で、最早決着は魔王軍の頭である魔王を倒すか、
人類の希望である勇者が散るか、その二つでしかつかなかった。
そして、そのことをよく理解していたチヒロ達パーティーは全面衝突で手薄になっていた魔王城を強襲。
魔王との最終決戦を仕掛けにかかる。
しかし、魔王もまたその行動を読んでいたのだった……
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「アレックス、危なくなったら無理せずに下がってよ?」
「わかってるさ、だが、本命に着くまではお前の消耗を抑えたいんだ」
戦士アレックス、後の歴史では初代『戦闘の達人』と記されている。
剣・槍・斧に拳と武器を選ばない継戦能力の高さと、持ち前のタフさから重装備で前衛に立ち続ける、
勇者パーティーにとってのまさにタンク役だった。




