任命理由
「で、でも、きょうだいを疑うなんて……」
「これはアンタにしか出来ないの」
「どうして、なんですか……?」
「いい?アンタは末っ子という立場上、他のきょうだい達の懐に飛び込められるわ」
「それは……まぁ、わかりますけど……」
「そして……信用出来るのが現状アンタだけなのよ」
「それはきょうだい達を疑うからじゃないですか」
「もちろん、それもある。でも、唯一権力らしい権力を持ってないと断言出来るのがアンタだけなの。
他のきょうだい達は何かしら、権力……立場に縛られているわ。
でも、アンタはそうじゃない。腰が軽い利点もある」
「エル兄さんも似たようなことを言ってましたけど……エル兄さんには頼まないんですか?
エル兄さんも立場はあるでしょうけど、傭兵なら、比較的身軽なほうじゃないですか?」
「悪いけど……エルも信用出来てないの。アイツが”クロ”じゃない保証なんてないわ」
「……双子なら、私以上にエル兄さんのことをわかるんじゃないですか?」
「それは子供の頃の話。エルとアタシは別の人間よ」
まぁ、見た目で言えば、その通りだろう。
子供の頃はそっくりだったのだが、今はもう……明らかに違い過ぎる。
「それにアイツに頼みごとなんて、死んでもごめんだし……」
「え?」
声が小さくて聞き取れなかった。
「ともかく、アタシが”シロ”を確信してるのはアンタだけなの!
極論、父さん母さんも可能性だけなら、あるわ」




